川合メソッド2〔第二部〕
英語の音質で話す練習
この練習は中学生、高校生は行わないでください。成長期に発声器官を傷めるようなことになったら大変ですので、中学生、高校生は行わないでください。大人の方でも、練習中自分の発声器官に違和感を感じたら、直ちに練習を中止してください。今まで使っていなかったところを使う練習ですので、違和感を感じたら練習は中止してください。英語の音質で話せなくても、基本の発音ができていれば英語は通じます。
それでは、練習を始めます。
「英語の音質で話す練習」をするとネイティブのような鼻腔に共鳴した声になります。下は実際に練習した方の練習前と練習後の音声です。練習後には英語を話すときの声が鼻腔に共鳴しているのがわかります。 (出典はオー・ヘンリー「最後の一葉」)
この練習は「子音の日本語化を直す練習」をした後に行ってください。「子音の日本語化を直す練習」で息を強く使えるようにし、軟口蓋を上げておく筋肉がついていないとするのが難しいからです。
第1週の練習 鼻腔に共鳴している音がどのように出てくるのか考えながら発声練習2番「ニアニア」の音声を聞く
まず、第1週目は沢さんや相田さんと同じように聞く練習から入っていただきます。
下は私のDVDからとりました発声練習2番ニアニアの練習の音声です。この音声を「川合典子は、口の後ろから鼻にかけて、どうやってこの声を出しているか」考えながら一日一回聞いてください。
私は軟口蓋を上げて発声しています。軟口蓋というのは口の天井を後ろに行ったところにある柔らかい部分です。私の本「英語発音、日本人でもここまでできます。」のマニュアル12ページに絵があります。DVDでは11分30秒のところで説明しています。でもそのことにあまりとらわれないで結構ですから、この声がどうやって出てきているのか、それを考えながらじっと集中して聞いてください。
発声練習2番ニアニアの練習音声はこちらです。
(mp3、2分19秒)
相田さんは50代の女性ですが3日で鼻腔への通り道が開きました。ということはこの練習は年齢とは関係ないということです。皆さんの中にも3日で、鼻腔への通り道が開く方が出てくるかもしれませんね。とにかく「この声は川合典子の口の奥から鼻にかけてどうやって出てきているのか」それを想像しながら一日一回音声を聞いてください。
なお、最初の本を出版するときに、声楽の萩原先生に確認いたしましたところ、「鼻腔への共鳴のさせ方は、基本的に男性も女性も同じです」とお答えを頂きました。男性の方も、私の声が口の後ろから鼻腔にかけてどのようにして出てきているか想像しながら聞いてください。
その時、耳に神経を集中して、音を聞いてください。第二部の練習は、聞いた音と同じ音を出すようにする耳の働きを使って、鼻腔への通り道を開けていきます。
「子音の日本語化を直す練習」で行いました Where are you? の練習は、今回から唇の力をつけるというよりは、軟口蓋を上げる力をつけるのが目的となります。鼻腔への共鳴ができるようになると今までより大きな空間に声を響かすことになりますので、たくさんの息が必要になります。そのため簡略腹式呼吸(水道管呼吸法)の練習も続けて行ってください。今までは4秒x5回でしたが、今日から5秒x5回で行ってください。
Where are you? の練習と簡略腹式呼吸の練習は毎日行い、子音の日本語化を直す練習で行いました子音の長い例文は一日1種類を3回言っていただくだけで結構です。下が今週1週間の練習内容です。来週から実際に自分の声を録音していきます。
- 第1週の練習
DVDにある発声練習2番「ニアニアの音声」を「この声がどうやって出てきているか」を想像しながら一日一回聞く - 毎日する練習
(A)Where are you? の練習5回
(B)簡略腹式呼吸の練習(5秒x5回) - 第一部で習得した(2)長い子音の言い方(L、N、W、F、R、M)は毎日1つずつ練習してください。
止めてしまうとすぐに子音を長く保つ力がなくなってしまいますので。
第2週の練習 実際に鼻腔に共鳴させた音で話す
一週間、鼻腔に共鳴のある音声を聞いて「どうやって鼻腔への通り道を開けるのか」なんとなくお分かりになってきたのではないでしょうか。
第2週から実際に発音していきます。
その前に一つ皆さんにお願いしたいことがあります。
この練習は、今まで日本人が使っていなかった鼻腔への通り道を開けていきます。ということは、新しく開いた鼻腔への通り道は今まで閉じていた部分であり、開いた瞬間、初めて空気が通るということです。
従って、この部分の粘膜が弱い方の中にはひりひりしたり、違和感を感じる方も出てくる可能性があります。そういう「ひりひりした感じ」や違和感がありましたら、直ちに練習は中止してください。
そういう方はこの練習をすると、粘膜を傷める可能性がありますので、この練習は、行わないでください。
また、違和感のない方も、新しく開いた鼻腔への通り道を傷めないように、細心の注意を払ってください。寒い季節に練習する時は十分部屋を暖かくして、練習を行ってください。冷たい空気がいきなり、鼻腔への通り道に入ると粘膜を傷めます。
空気が乾燥している場合は適度に加湿器を使ったり、お湯を沸かしたりして、口腔、鼻腔に負担がかからないようにして、練習してください。
私が英語を話す時こういう発声の仕方になったのは、著書「英語発音、日本人でもここまでできます。」17ページに書きました通り、今から25年前、シカゴの病院で、受付のアメリカ人の質問に答えていた時、その人と同じ音質になるように、ひとりでに、口の中が変わって行った時からでした。
ですから、ネイティブと似るように、自分で考えて口の形を変えたわけではありません。アメリカ人の質問に答えていくうちに、彼女と同じ音質でしゃべるように、ひとりでに口腔、鼻腔の形が変わって行ったということです。(私が35歳の時でしたから、臨界期仮説から言うとありえないことですね。)
その後、発音練習をしながら、「もう少し明るい音質がいいな」とか「もう少し、後ろの方に共鳴させた方がいいな」とか、音質の好みで、いろいろ共鳴の位置を変える努力をしましたが、基本的にこの口腔、鼻腔の形は、あの時シカゴの病院の受付で、アメリカ人と話していた時にひとりでに身に着いたものです。私は耳が「聞いた音と同じ音質」を出そうとして私の口腔や鼻腔の形を変えたと思っています。目に見えない部分を開けていく練習ですので、耳で聞くことが非常に重要となります。
鼻腔への通り道を開ける練習は、まず、Nの例文で始めます。「ニアニアの練習」でも述べましたが、Nの音は鼻腔への通り道が開きやすいからです。
軟口蓋を上げて発音しますが、今まで軟口蓋を上げたことのない人にはやりにくいと思いますので、やりやすい方法を申し上げます。
首をちょっと前に出すと、軟口蓋は上げやすくなります。私がこういう説明をしましたら「川合先生、首をE.T. みたいにするんですね」と言った生徒さんがいて、「言い得て妙」で笑ってしまいました。
E.T.というのはスピルバーグ監督の映画に出てくる宇宙の生き物です。それで、E.Tの画像を検索していましたら、こちらに、参考になる画像がありました。
E.T. 自身の画像ではなく、女の子の画像です。この中に右下(たまに映像が逆向きの時があります。その時は左下)に花が咲いている植木鉢が小さく映っていて、E.T.くらいの背の高さの女の子がE.T.の鼻にキスしている画像があります。
女の子はストライプのTシャツに黒っぽいジャンパースカートをはいています。この画像はアクセスするたびに並び順が違うので、上から何番目とか皆さんに、ご説明できないので、探してみてください。
この小さな女の子がE.T.にキスするために少し首を前に出しています。このくらい首を前に出すと、軟口蓋を上げやすくなります。
そうやって少し首を前に出して、軟口蓋を上げてからNの例文を言ってみてください。音質は私のを真似てもいいですし、先回のブログでお話しした、相田さんの音声でも結構です。沢さんが「自分と川合先生の中間に位置する発音でとても参考になった」と言っていた音声です。
そうしたら、私の音声か相田さんの音声をお手持ちのICレコーダー(テープレコーダーやスマートフォン)に録音して、そこに自分のNの例文の音声を録音して、聞き比べてください。どこが違うか、どうやったら、音質が似て来るか、それを考えながら聞き比べて自分で、発声の仕方を直していってください。
なぜ、ICレコーダーやスマートフォンに私や相田さんの音声を録音して、自分の音声と比べるかというと、沢さんから「同じ機械にある録音で比べないと違いが分かりづらい」という指摘がありました。自分の発音はICレコーダーに録音して、見本の音声をパソコンから聞く、という比べ方では違いが分かりづらかったそうです。それで、最初に私の音声、あるいは相田さんの音声をICレコーダーやスマートフォンに録音していただいた方がいいと思いました。
練習のやり方については、最初は一回一回、自分の鼻腔、口腔の状態を確認しながら少しずつ行ってください。間には十分休みを取り、鼻腔への通り道を傷めないことを第一に考えながら練習してください。最初の日は、5回くらい、Nの例文を録音して、比べる作業をしたら、そこでやめてください。それ以上はやらないでください。翌日また鼻腔、口腔の状態を確認しながら行ってください。
一週間、この音質を比べて似せていく練習をしてください。沢さんから「Where are you? の練習をした後にやると、軟口蓋が上げやすかった」というお話がありましたので、聞き比べる練習に入る前に5回Where are you? の練習をしてからNの例文を録音して音質を比べる練習に入ってください。
今週はほかの練習はやらなくて結構です。音を比べて直す練習だけに集中してください。
これでは少し速いかもしれませんので、鼻腔への共鳴を強調して、もう一つ録音してみました。
相田さん(DVD発声練習2番「ニアニアの音声」を聞いて3日目で鼻腔への通り道が開いた時の音声)
この3つのうち、どれでもやりやすいものを見本に使って練習してください。
相田さんの音声のnever のN、knows のNの所でかすかに鼻腔への通り道が開いているのがわかりますね。
この時の相田さんの声はいつもの声よりとても大きい声でした。いつもは録音を送っていただいても、これでは声が小さくて、ブログにアップした時、聞きにくいだろうと思い、「もう少し大きな声でもう一度録音してください」とお願いすることがあったのですが、この時の相田さんの声はとても大きな声でした。
沢さんの方も鼻腔に共鳴させる練習をしてから、ご主人が「声が大きくなりました」とおっしゃっていました。これはとても良いことだと思いました。鼻腔の空間まで共鳴させるので、息もたくさん使い強く送り込みます。その結果、声は大きく、強くしっかりするので、騒がしいところでもよく通る英語になります。聞き返されることもありません。
電車の中などでアメリカ人が話していると声が強いので、離れていてもよく聞こえますが、そういう強さが声に出てきます。
- Where are you? の練習を5回した後、自分のNの例文の音声を録音し、見本と比べて音質を似せていく。
(自分の鼻腔、口腔内部を傷めないように注意して行う。違和感があったら、直ちに練習を中止する) - 簡略腹式呼吸の練習5秒x5回
第3週の練習 練習者の実際の音声
沢さんは、「ニアニアの音声」を聞くだけでは鼻腔への通り道を開けることは出来ませんでした。けれどもICレコーダーに録音して、私や相田さんの音声と比べて直す練習を始めたら2日後から鼻腔への通り道が開くようになりました。
ただ、一週間たってその週の録音をまとめて送ってくれた時、「いろいろ練習していたらどれがいいのか自分でもわからなくなりました。一週間分送りますので(雑音が入っているものもあります)どれがいいのか教えてください」とメールが来ました。
皆さんも同じような疑問を持っていらっしゃると思いますので、今日はその録音を載せて、一つ一つ説明していきます。皆さんの録音の中に似た音質の物がありましたら、参考にして下さい。
練習2日目の録音
少し鼻腔への通り道が開いています。
まだ響かせる空間は小さいです。
練習3日目の録音
ふたをかぶせたようなこもった響きが強いです。
響かせる空間も狭いです。
練習4日目の録音
練習5日目の録音
音が少し強くなってきましたが、まだ空間が狭いです。
空間が狭いために、かぶせたようなこもった響きが強いです。
練習6日目の録音
一週間分送られてきた録音の中では、これが一番空間が開いています。
最初は空間を大きく開けていくことが大事です。きれいに響くポイントを見つける前に、まずある程度の空間を開けることが大事です。そういう意味で、一週間分送られてきた音声の中では、これが「一番空間が開いている」ので一番いいです。この開け方で、空間をもっと開けていってください。
練習7日目の録音
昨日の録音より、空間が小さいです。もう少し高く軟口蓋をあげてください。
私は以上のような返事を書いて沢さんに送りました。
私はこの時、沢さんに「軟口蓋を上げてください」とお願いしました。実際にはおそらく口と鼻腔の境目で、次のような動きをしているのだろうと思っています。
鼻腔に共鳴するところは軟口蓋に隣接し、最初のうち閉じている。つまり次の図のAの部分とBの部分はくっついている。
それが軟口蓋を引き上げる動作によって、Aの部分が上に上がって、AとBの間が開くのだろうと思っています。それが鼻腔への共鳴をするところだと思っています。
沢さんの一週間の録音を聞くとまだAの部分の引き上げ方が、足りないという気がします。その結果まだ、響かせる空間が狭く聞こえます。それで、もう少し高く上げて、AとBの間の空間を大きくしてもらいたいと思いました。
この録音を送ってくれた5日後、沢さんは風邪をひいたので、8日間練習をお休みしました。川合メソッド2第二部の音質の練習は、風邪を引いたときは休んでください。下の録音は風邪が治ってから8日間練習した後の録音です。
練習21日目の録音
練習6日目の音声に比べると暗い感じがします。
空間が狭く空間の高さが低い感じがします。
もう少し軟口蓋を高く上げて空間を大きくとってください。(つまり、軟口蓋を高く上げることによって、Aの部分をもっと上げてもらいたいと思いました)
「沢さん自身で6日目の音声と21日目の音声を比べて感想を聞かせてください」と私はお願いしました。
21日目の録音は、6日目の録音に比べてこもっている感じがします。「空間の高さがない」という指摘はわかります。
音の高低は関係ありますか?
練習の時、高い声でやれば近い音が出ている気がしますが、結構きついです。低音でやると普通に言えますが、何かいまいちしっくりこない感じです。
音(声こえ)の高低は関係ないです。(これについては下の注をお読みください)
ただ、元気がない、暗い音に聞こえた時は軟口蓋、唇、口角、口の空間、すべてをとにかく上げて発音するようにしています。そうすると明るい音になってきます。力がいるので、結構きついですが。
軟口蓋を上げるのがきつかったら、ちょっと姿勢は悪くなりますが、首を前に出して軟口蓋を上げてみてください。軟口蓋が上げやすくなると思いますがどうですか?生徒さんがE.T.みたいって言ってましたけど。
首を前に出して軟口蓋を上げると、確かにやりやすいです。なんか自然とそうなっていたみたいです。逆に姿勢を正すと苦しいです。
E.T.(笑い)わかりやすい!
その一週間後、練習開始28日目の録音
Nの発音の響きが上に上がってきました。(私が沢さんに送った返事)
以上が、沢さんの練習28日目までの音声です。最初は沢さんの28日目の音声くらいまで空間を開けていくことを目標にしてください。練習3日目のような小さな空間で、「英語らしい」と思わないでください。こんな小さな空間では、声も小さいですし、響きも小さいです。これでは、こもって相手の人に良く聞こえませんし、鼻腔の固いところに当たったきれいな響きもありません。(どこに当てるか、そのポイントは、来週か再来週に説明いたします)とにかく最初は出来るだけ軟口蓋を引き上げて、上の図のAとBの間の空間を広げることを目標に練習してください。
今日の沢さんの音声と私のコメントを参考にして、もう一週間、出来るだけ大きな空間を開けられるよう、見本と比べて自分の発声を直す練習をしてください。
お店で、若い女性の店員さんが、「いらっしゃいませ」というときの声は高いですね。私は以前、そういう高い声で英語をしゃべらないように気を付けていたことが一時期ありましたが、現在は「空間を大きくとること」に集中しているので、「低い声でしゃべる」という意識は全くありません。共鳴させる空間が日本語のように狭いまま、声だけ低くすると、相手が聞き取りにくくて、聞き返されてしまいます。けれどもこういう共鳴のさせ方をしますと、英語の音質になりますので、「英語を話す時の方が声が低い」と感じる方もいらっしゃると思います。
それはたぶん声が響く空間の大きさの違いによるものだろうと思います。こういう空間は、日本語を話しているときより、大きな空間になります。大きな空間にこういう共鳴のさせ方をすると「低い」と感じるのではないかと思います。バイオリンよりチェロのほうが低い、それと同じような感じだと思います。
川合メソッド2第二部は、故意に声を低くしないで、日本語を話している時と同じ声の高さで行ってください。その理由は、皆さんにはこの後もう一つやっていただく作業があります。それはきれいな共鳴をつけるために必要なことです。その時、声を故意に低くしていると、この作業ができません。ですから普通の声の高さで、この練習は行ってください。これは女性の方も男性の方も同じです。鼻腔は喉より上の位置にあります。そこに共鳴させてきれいに響くポイントをこの後、練習して身に着けていきます。その練習をする時に、声を低くしていると鼻腔に響かせることができません。ですから、この練習では故意に声を低くしないでください。
沢さんに「男性もネイティブは鼻腔に共鳴する声で話していますが、わかりますか?」とお聞きしたら、彼女は即座に、「ええ、それはよくわかります」とおっしゃったので、彼女もよく音を聞いていると思いました。
- Where are you? の練習を5回した後、自分のNの例文の音声を録音し、見本と比べて音質を似せていく。
なるべく空間を大きく、高くとるように練習してください。
(ただし、自分の鼻腔、口腔内部を傷めないように注意して行ってください。違和感があったら、直ちに練習を中止してください) - 簡略腹式呼吸の練習5秒x5回
第4週の練習 軟口蓋を引き上げる位置の説明
今週一週間練習してみていかがでしたか。なかなか空間を高く上げるのが大変だったと思います。
外からは見えない部分の変化なので、どこを上げているか、どう説明したらよいか、私も随分考えました。いろいろ考えて説明した中で、沢さんが「よくわかりました」とおっしゃった説明があります。今日はそれを皆さんにお話しいたします。
私はいびきはかきませんが、いびきの真似をすることは出来ます。下の音声ファイルは私が一生懸命練習したいびきの音です。(こういう音の出し方は、発声器官に良くありませんので、皆さんはしないでください。音を出している部分が痛くなります)
あまりきれいな音ではないので、皆さんに聞いていただくのは、申し訳ないですし、年を取ったとはいえ私も一応女性なので、こういう音声を載せるのはとても恥ずかしかったのですが、皆さんの学習に役立つ材料はすべて提供するのが、最も大事なことだと思っていますので、載せることにしました。
この音を出している口の中の部分があります。音を出しているのですから二つの面がぶつかっている部分ですね。そこから少し上の位置にある部分を私は高く引き上げて英語を発音しています。「垂直にまっすぐ上」というより、まっすぐ上に上がったところより、少し前の部分を高く引き上げて英語を発音しています。
どのくらい上かというと、測れないので、何センチとは、はっきり言えませんが、2,3センチ上という感じでしょうか。正確には言えませんが。
とにかく、いびきの音が出ている地点の少し上(斜め前上)あたりを思い切り上げてみてください。そうすると鼻腔に共鳴した音が出てきます。
たぶんその部分を上げると、先週説明いたしました、AとBの間が開いてくるのだと思います。やってみてください。
今までの練習では、Nの例文だけ使ってきましたが、今週から、今まで使ったL、N、W、F、R、Mの例文の中で言いやすそうなものも使って、鼻腔に響かせる練習をしてください。
沢さんは実はFの摩擦があまり上手に出来なかったので、音質の練習と第一部のFの練習を並行してやっていました。ある週、送られてきたFの例文(普通の長さでFを発音する例文)で非常にきれいに鼻腔に共鳴しているものがあって、私はびっくりしました。そのことをお伝えすると、沢さんから、「慣れてきたら、いろいろな文でやった方がいいかもしれないですね」という感想がありました。
それで今週からは、皆さんもNの例文とN以外で自分がやりやすそうな例文を使って鼻腔に共鳴させる練習をしてください。
来週は、美しい共鳴をつけるためには、鼻腔のどの部分をポイントに声を当てたらよいか、その位置について説明いたします。それまでに、今より少し空間を広く、高く取れるように練習してください。
- Where are you? の練習を5回した後、自分のNの例文の音声を録音し、見本と比べて音質を似せていく。
N以外の例文でも練習してみる。音を響かせる空間が大きく、高くなるように練習してください。
(自分の鼻腔、口腔内部を傷めないように注意して行う。違和感があったら、直ちに練習を中止する) - 簡略腹式呼吸の練習5秒x5回
第5週の練習 美しく共鳴させる位置の説明
今週は美しく鼻腔に響く位置についてお話をします。実際に皆さんがその場所に共鳴させる練習をするのは後一か月くらい、空間を大きく高くする練習をしてからにした方がいいと思います。
眼鏡を思い浮かべてください。
眼鏡の右のレンズと左のレンズをつないでいる細い部分があります。眼鏡をかけると、その細い部分は鼻の上にかかります。
その細い部分からだいたい2センチくらい下の鼻の位置に声を充てるように発音していくときれいに響きます。(十分な空間をとっていないと響きません)
次の音声は、私のNの例文の音声ですが、空間を作ったら、その部分に声を当てています。
次の3つの音声は沢さんの発音です。3つともその部分に声が当たっています。ただ、まだ少し、空間が狭いので、こもったような音がする部分があります。
練習62日目(1)の発音の前半は響いていますが、「後半の部分」はかぶせたようなこもった音がします。人によってはこういう音を英語らしい、という人もいますが、こういう音は遠くまで届きません。
私たち家族がニュージャージーに住んでいたころ、家の修理に来てくれた大柄なおじさんは、確かにかぶせたようなこもった音質で話す人でした。けれどもその声はとても強く大きく、胸の周りまで振動しているのではないかと思うような声でした。
かぶせたようなこもった音質でも、そのくらい強く大きく聞こえればよいですが、(1)の発音の「後半の部分」の声はそういう強さや大きさはありません。
ここではマイクを使って録音しましたから(1)の後半の声もある程度の大きさを持って聞こえますが、響きの音の大きさを聞いてみてください。沢さんの62日目(1)の発音の前半は響いていますが、「後半の発音」を私と比べると、響きの大きさ、響きの広がりが違うのがわかると思います。
響くためには空間を大きくとり、その大きな空間に当てる為、息もかなり強くする必要があります、小さな空間で、かぶせたようにこもった低い音ですと相手に届きにくくなります。ざわざわしたところだと聞き返されてしまいます。
それで私は、最初の週から「空間を大きくとってください」と繰り返し皆さんにお願いしてきました。第一部の練習から簡略腹式呼吸の練習も入れてきました。
私は音質の指導をするときに、「ネイティブっぽく聞こえる」ということを目標に指導することはありません。次の3つを目標にしています。
- 鼻腔に共鳴させること
- 空間を大きく、高くとること。その大きな空間に当てられるだけのたくさんの息が使えること。
- 美しく共鳴するポイントにあたっていること
この3つを習得していただくことを目標にしています。
舌の付け根を下げることは、DVDの中で「Lonely Tiger」の練習としてやっていただいています。ただ、それだけでは大きな声にはなりません。
オペラの指導をするバーバラ・ボニーさんが2011年NHKの「スーパーオペラレッスン」という番組で、「喉頭(こうとう)を押し下げると内側で声を大きく響かせられるような気がしますが、外側で大きく響くわけではありません。」とおっしゃっていました。自分が喉を下げて発音して響いているように聞こえても周りの人には喉を下げた発音が響いて聞こえるわけではない、ということです。声は固いところに当てるとよく響きます。ではどこに当てるのか、ということですね。
私は小柄なので眼鏡の細い部分から2センチメートルくらい下に声を当てていますが、大柄な方は3センチメートルくらい下かもしれませんね。
そのあたりの固いところに声を当てていくときれいに響きます。
私のところにお問い合わせをくださった方の中に、「軟口蓋を上げながら、文の最初の方は発音できますけれど、それを維持できません」とメールをくださった方がいらっしゃいました。確かに今まで上げたことのないところを上げて保持しながらしゃべるのは大変だと思います。
そういう時は、少しずつ上げていられる時間を伸ばして、まず、一つの文を最初から最後まで、軟口蓋を上げてしゃべれることを目標に練習をしていかれるとよいと思います。
もし発声練習ができる環境でしたら、発声練習をしていただくと、軟口蓋を上げてしゃべることも、少し楽になると思います。ただ、現実には、住宅事情や帰宅時間の関係で、発声練習は難しいと思いますので、音読の練習の時、少しずつ、軟口蓋を上げていられる時間を伸ばしていかれるのがいいと思います。
声楽の練習をしていると、「鼻腔は魔法の場所みたいだなあ」と思うことがよくあります。鼻腔に響かせると、音がきれいに響きますし、音が強くなります。(このためには、息もたくさん送れるようにします)音程も安定します。
英語の発声と声楽の発声は、最後に声が抜けるところが違いますが、鼻腔に響かせることは同じですから、この「魔法の場所」を英語を話す時も大いに活用してください。私はDVDでは英語の発声の仕方で、発声練習をしていますので、そのまま真似していただいて、大丈夫です。
きれいな音は、聞く人にとっても聞きやすいので、今日ご説明いたしました位置に声を当ててみてください。
今日聞いていただいた沢さんの発音は実際に発音する練習を開始してから62日目です。沢さんが美しく共鳴する位置が分かったとおっしゃったのは実際に発音する練習をしてから42日目でした。皆さんは今、5週目に入ったばかりですから(実際に発音する練習では第4週目に入ったところですね。)、後3週間くらい空間を大きく高く開ける練習をして行くとこの美しく共鳴する場所がわかってくるのではないかと思います。
寒い季節に練習する方は、部屋を暖かくして、加湿器やお湯などをわかして、適度な湿度を保った部屋で、練習してください。沢さんや相田さんのようにお風呂で練習するのもよいかもしれません。発声器官を傷めないように練習をしてください。
- Where are you? の練習を5回した後、自分の発音を録音し、見本と比べて音質を似せていく。
(自分の鼻腔、口腔内部を傷めないように注意して行う。違和感があったら、直ちに練習を中止する) - 簡略腹式呼吸の練習6秒x5回(先月より1秒増えています)
第6週の練習 自分がよいと思う鼻腔に共鳴した発音を見つける
先週NHKでスーパーオペラレッスンという番組に出演されたバーバラ・ボニーさんの「喉頭(こうとう)を押し下げると内側で声を大きく響かせられるような気がしますが、外側で大きく響くわけではありません。」という言葉を紹介しました。
私が高校の時、初めてついた声楽の先生が「声というのは柔らかい所に当てても、響かないの。堅いところに当てないと、響かないの。」とおっしゃいました。また、数年前、藤原歌劇団に所属していらっしゃるオペラ歌手の方が教えてくださる歌の講座を受講した時、その方が、鼻の横のあたりをおさえて、「このあたりの骨には小さなくぼみがいくつかあって、そこにも声は響くのですよ」と教えてくださいました。ですから、喉のような柔らかい所だけでなく、鼻腔のような堅いところにも当てないと、声というのは遠くまで響きません。
そして、声は鼻腔に共鳴させることによって美しく響きます。喉だけでは、この美しい響きは出ません。川合メソッド2によって、英語に美しい響きが出るのは、この鼻腔への共鳴があるからです。英語を聞いていると、男女ともに、この鼻腔に共鳴した音が聞こえますね。アメリカ人は小さいときから当たり前にやっていることですから、わざわざ「鼻腔に共鳴させている」などという意識はないでしょうけれど、発音を聞いていると、鼻腔に共鳴しているのが分かります。沢さんに、「男性の声も、鼻腔に共鳴しているのがわかりますか?」とお聞きしたら、「はい、分かります。」と即座にお答えになったということは以前にも書きました。
沢さんには約2か月間、英語の音質で話す練習をしていただきました。最後の週に私が沢さんにお願いしたのは次のようなことでした。
今週で練習が最後になります。
今週は沢さん自身が「一番良いと思う音」を出すように練習してください。そして、来週、最後の録音を送ってください。
なぜ自分でよい音を見つけるのかというと、声はみんな違いますし、体のつくりもみんな違います。だからその人の体にあった発声をしていくことが大事になります。
沢さんの口の中や鼻腔の状態は私には、わかりません。そこでこれから先は沢さん自身が自分にとって一番良い音質を見つけて身に付けていくことになります。
自分が今まで練習してきたことを踏まえて、自分にとって、一番良い音を見つけるように練習してください。
これが私が最後の週に沢さんにお願いしたことです。
皆さんの場合は後もう3週間くらい練習してからこの作業を自分で行っていただくことになると思います。
「自分が良いと思う発音」を身に付ける時に最も重要なことは、「よい発音」をたくさん聞いておくことです。そして、その中で自分がこういう発音をしたいな、と思うものをイメージして、練習していくことです。
私は、アメリカのテレビ局CBSやABCの番組に出ている人の発音も参考にしましたが、身近なところでは気に入っている発音教材を読んでいる人の声も参考にしました。
どのような発音でもいいですが、あまり個性的なしゃべり方の人は避けてください。演説や映画のセリフも避けてください。(演説は流れるような言い方でなく単語一つ一つが強調されます。映画のセリフはしゃべっている内容と必ずしも同じ気持ちを伝えていない場合があります)
皆さんは今練習29日目ですので、最後の調整をするまでに後1か月くらいあります。その間に自分がいいな、と思う発音を見つけてください。
今週からWhere are you? の練習を10回行ってください。沢さんは、川合メソッド2で初めて音質の練習をしたのですが、かなり軟口蓋を上げる力をキープできています。実は沢さんには最初からWhere are you?の練習を10回ずつしていただいていました。皆さんは、録音して比べる作業が大変ではないかと思いましたので、今までそれより少ない回数でやっていただいていました。けれども、もう録音することにも慣れていらしたと思いますので、今日から10回にして練習してください。これは小さな練習ですけれど、軟口蓋を上げる力をつけるのに非常に有効です。娘が一度、一週間この練習をせずに歌の練習をしたとき「今日はどうしたの?」というくらい発声は軟口蓋が上がっていませんでしたし、歌詞の英語の発音も弱かったです。小さな練習ですけれど、軟口蓋を上げる力、唇を保持する力が確実につきますので、毎日行ってください。
また空間が広く開いてきますので、強い声を出すために十分な息の強さが必要になります。水道管呼吸法も一か月1秒ずつ伸ばしていってください。来月に入ったら7秒x5回に増やしてください。けれども無理は禁物です。出来る秒数で少しずつ伸ばしていってください。
沢さんと相田さんには最初から6秒x5回でしていただいていました。2か月後、沢さんには10秒x5回に増やしていただきました。終了間近に感想を聞きましたら、「いまだに結構しんどくて後半はグダグダですが、一応10秒でやっています」とメールが来ました。
私も水道管のように強く太い息で吐き続けるのは8秒くらいしかできませんが、10秒目指して、とにかく10秒まで、おなかを使って少しでも息を出し続けると、おなかも強くなってきます。それを皆さんにも訓練していただきたいと思っています。
- Where are you? の練習10回
- 簡略腹式呼吸の練習6秒x5回
(6秒は目標ですので、出来る秒数で結構です。1回終わるごとに十分休んで5回行ってください。無理をしないでください) - 自分の発音を録音し、お手本と比べて、同じ音質になるように直していく。なるべく大きな空間に響かせるようにする。お手本はN以外の例文でも結構です。
寒い季節に練習する方は暖かい部屋で、十分湿度を保った状態で練習してください。録音は出来ませんが、お風呂の中で練習していただいても結構です。 - 自分がこういう音質で話したいな、と思う英語のお手本を探してださい。
空間を高く大きく開けることに慣れてきたら少しずつ、きれいに共鳴する位置を意識してお手本を聞いてください。
第7週以降の練習
実際に英語の音質で話す練習を開始してから2か月くらいで英語の音質で話す口腔、鼻腔の形を体得できると思います。
- Where are you? の練習10回(時間がない方は5回で結構です)
- 簡略腹式呼吸の練習6秒x5回
6秒は目標ですので、出来る秒数で結構です。1回終わるごとに充分休んで5回行ってください。無理をしないでください。慣れてきましたら、一か月ごとに1秒ずつ伸ばして10秒x5回を目標にしてください。 - 自分の発音を録音しお手本と比べて、同じ音質になるように直していく。
お手本は自分の選んだもので結構です。 - なるべく空間を大きくとることを目指してください。大きな空間が取れるようになったら、美しく響く鼻腔のポイントにあたることを目指して練習してください。寒い季節に練習する方は、暖かい部屋で、十分湿度を保った状態で練習してください。録音は出来ませんが、お風呂の中で練習していただいても結構です。
英語の音質で話す練習終了後、沢さんがオー・ヘンリーの「最後の一葉」を音読した時に感じたことを音声ファイルと一緒に送ってくれましたのでご紹介します。(太字は私が重要だと思ったところです)
息が続くので長い文を楽に読めました。
前は息が続かなくてハアハア言っていたところが結構あったのですが、今回は特に感じませんでした。
やはり子音を意識して読むようになりました。
前はだらだら抑揚もなく読んでいたと思います。
今は子音をためるせいか、強弱?みたいなのがついている気がします。
口角までよく動くようになりました。
感覚で言うと、口を横にも動かせるようになった気がします。
唇の動きは全体的に大きくなりました。
音読の声が大きくなった!!
鼻腔に響くように読んでいました。
全体としては、顔全部を使うようになった感覚です。
ここでもう一度以前ご紹介した川合メソッド2練習前と練習後の沢さんの発音の比較を聞いてください。
子音を明確にしゃべる唇の強さがあり、大きな声でしゃべれる息の強さがあることが読者の皆さんにもお分かりになると思います。
彼女自身にこの比較を聞いてもらいましたら次のような感想が送られてきました。
全然違う!
前のはただ読んだ感じ。
国語の音読と変わらないし、ぶつぶつ切れている感じがします。
今回のは声が響く感じがしました。深いというか。
同じ自分とは思えない。
「国語の音読と変わらない」という表現がよく特徴を表していて、面白いですね。私は「最後の一葉」の英文を彼女に直接発音指導はしていません。彼女が一人で読んだものです。
川合メソッド2は、日本人の英語がわかりづらくなる点にポイントを絞って練習しますので、簡単な練習を続けるだけで、このように通じやすい発音に変わります。